2025.7.3 第75回
今日の心がけは「見えないものを大切にしましょう」
というテーマでした。
突然ですが、皆さんは「三業(さんごう)」という仏教用語をご存じでしょうか?
仏教では、人間の行為を「三業」と呼ばれる3つのカテゴリーに分類しています。
1つ目が「身業(しんごう)」…これは身体を使った行為、つまり行動や動作のことです。
2つ目が「口業(くごう)」…言葉を使った行為、つまり話すことや書くことなどです。
そして3つ目が「意業(いごう)」…これは心の働き、思考や意図のことを指します。

「業(ごう)」とは、行為全般を意味する言葉で、良い行いには良い結果を、悪い行いには悪い結果をもたらすとされています。
1つ目の身業と2つ目の口業は、目に見えたり耳で聞こえたりするため、私たちはそれによって人を判断しがちです。
「あの人はいい人そう」「なんとなく苦手」といった印象も、こうした外に見える行動や言葉によって形づくられます。
しかし、仏教では最も大切なのは、3つ目の意業だとされています。
なぜなら、これは「心の行い」だからです。
心の中でどう考え、どんな意図を持つかによって、その後の言動や結果に大きな影響を及ぼす――そう考えられているのです。
たとえば、誰かを傷つけようと心の中で思ったとしたら、たとえそれを口や行動に出さなくても、意業としては「悪い行為」とみなされるという考え方があります。
私たちは、人の目に触れる場面ではそうそう悪いことはしません。
けれど、本当に大切なのは、人に見えていないところで何を思い、どう行動するか・・・つまりその人の“本質”の部分ではないでしょうか。
キルティング班で私が教えていた頃、この中にも当時の仲間がいらっしゃると思いますが、こんなことを伝えたのを覚えているでしょうか。
「自分を中心に全球体のレーダーを張ったつもりで周囲を見なさい」と。
これは、稼働中の機械の異常を素早く察知するために伝えた言葉でした。
視野が狭いと、異常への対応が遅れてしまうからです。

でも、これは人との関係にも通じることだと思うんです。
目の前の相手の、見える部分だけを見るのではなく、可能な限り視野を広げて、
その人の内面や本質にも意識を向けることが、相手を本当に理解する上で大切なのではないでしょうか。
今日の心がけ、「見えないものを大切にする」
それは他人だけでなく、自分自身の心の持ちようにも関わる、大切な視点だと私は思います。